2022年11月号の Editorial
弟子がいつの日にか師匠になる
教師の非凡な才能を吸収するために、弟子達はどのくらいの期間が必要か?弟子達は、トイレや居酒屋の中にも、ついて回るのだろうか?それとも、海外まで逢いに?住み込みで?または多分、先生の型にはまった生活やしゃべり方までまねる?
概ねそういう風だろう。
今回のNAJOMでは、直接的あるいは間接的に「先生の仕事を観察する」というテーマに、31人が応えて、情熱的な記事を書いてくれた。これらの記事は、まだまだ氷山の一角であろう。
これらを、どうか、ゆっくりと読んで欲しい。
これらの記事は、それ自身が一つ一つ世界を持ち、非凡な治療家と彼らの親愛なる師匠のライフワークへの入り口だ。でも、それは弟子にとって、必然的に発生する最もプレッシャーを感じる時間でもあった。
今号でも、日本式治療を構成する、興味をそそるスタイルと道具の多様性を反映している。しかしこれらの記事を通じて、伝統的治療を明確にするために使える普遍的な指導原則が、高々と反響している。
原オサムは、小林センセイの後を受け、“守破離”を書いた。多分それは、弟子が精力的に師匠を模倣して、それを乗り越えるプロセスのことであろう。
ナイジェル・ドーズは言葉で言い表せない以心伝心、’心で学ぶ’を書いた。それは弟子があっという間に深みに投げ込まれるような修行のことである。
高橋大希は、古典を知識のために学ぶだけではなしに、「鍼灸の探究に必要な観念」を育てることが大事だと、声を大にして言っている。
山田勝弘は、鍼灸が「患者のためである」ことを学び、そして今それを教えている。それは、我々は’情’を持たなければならいということだ。
師弟関係のオーバーな表現から離れて投稿者の何人かが、変化を提唱するためにこのテーマを使った。本質的に、我々の言葉と役割モデルの選択を通して、固定観念を阻止しなくてはならない。
パメラ・ファーガソンは、’私の師匠の多くは女性である’と遠回しには言わない。彼女は長い間'師匠’のような偏った用語(男性がいつも頂点にるような社会構造と結びつく)の使用に反対した。
これは師弟関係において、多くの女性教師の地位について、何を暗示しているか?
オラン・キビティーは、”英語の世界では、'マスター'は、中国語の老師や日本語の先生と等しくはない”と説明する。
「マスター」が熟達あるいは専門知識のレベルを暗示するのに対し、アジアではただ教師である。ナイジェル・ドーズはセンセイを「先に進んだ人」と定義する。
指針として、“他の人たちのために道を照らし、人を奮い立たせ導き、またサポートする”、これはNAJOM共同体のリーダーに、共感するだろう。
若干の投稿者は、心情や状況によって、彼らは師匠なしで念願を実現したという。上形井秀一は、'精神的に師匠'は持たないと明言したが、水谷潤治は、30年間首藤傳明先生をグローバルに追いかけたという。成功した治療家で、何はともあれ師匠につかなかった者はいるだろうか?もちろん、現代では、オールドスタイルの徒弟制度は、ほとんど不可能である。
原オサムは、弟子がインターネットのおかげで、守破離の守と破を省略して、簡単に離に向かう風潮が弟子にあるのではないかという。世界は変わり続ける。師弟関係も例外ではない。我々は、この号で見るように多くの先生方によって提供された真珠ー“守破離”を、もっと深く思い巡らす賢明さがあるのか?
小林詔司、岩品安柳(ドクターベア)、そしてKuon Dowonの各氏は、85号が出版されてから、今号までの間に世を去った。
NAJOMをサポートしてくれる読者の皆さん、寄付の呼びかけに即座に答えて頂き、本当にありがとうございました。御報謝は、印刷費や郵送費を減らし気候変動に対する影響を緩和するのに、役立たせて頂きます。さらにサポートお願いします。私たちはNAJOMがさらに発展するように努力します。
次号のテーマは、”はまっている治療法”、どのくらい深くはまってしまったか?そのアイディア、技術や道具などに対するこだわりなどを共有して下さい。自分の仕事のことだから、多分これは当たり前のこだわりかも知れないし、また特別なこだわりか、見せたくないこだわりかも知れない。しかし次号でのみ、自分の打ち込み方を共有して欲しい。できるだけ早くEメールで“投稿をする”と連絡ください;原稿の最終受け付けは、2023年1月10日です。師匠の仕事を見学するというテーマも、まだまだ書いて下さい。
編集長 シェリル・コール
今号の目次
居酒屋での語らいの中から 形井秀一 56
素晴らしい指導者達 パメラ・エレン・ファーガソン 57
一期一会の師匠との出会い スティーブン・ブラウン 58
師匠を追い続けて 原オサム 59
積聚治療入門Part22_師匠の仕事を見学する 高橋大希 60
小林詔司 1942 - 2022 ティシャ・マロン 61
師匠の仕事を観察する 山田 勝弘 62
スティーブン・バーチ:鍼灸界で最も輝かしい人物 オラン・キビティー 64
達人達と鍼灸の修得 トン・バン・フフェレン 65
伝統の火を引き継ぐ: クオン・ダウォン ピーター・エックマン 66
師はもっとも必要とする時、現れる ボブ・クイン 68
岩品安柳(1949-2022) 和田雅子 69
40年間の鍼、指圧、漢方—地図にない私の遍歴 ナイジェル・ドーズ 70
技の伝承と発展について 福島哲也 72
現代の深谷灸師、福島哲也 フェリップ・カウデット 73
私の三師匠の思い出 久保田直紀 74
師匠に従事したユニークな経歴 トーマス・ダックワース 76
師匠の仕事を見学する 奥村裕一 77
鍼灸木漏(こも)れ日 Part-7 首藤傳明 78
簡単で効果的な経筋治療の応用 手嶋智子、篠原昭二 80
PNSTによるピンポイント治療 Part 8 長田裕 82
産科の灸治療 田川健一 83
Overtone ・resonance pillowの臨床応用 安士正人 85
赤ちゃん、子どもの頭の治療とホームケア Part – 2 小松広明 86
更年期障害の鍼灸治療 高橋正子 88
玉井天碧の「指圧法」:指圧のルーツを探る Part 8 スティーブン・ブラウン 89
日本鍼灸史 Part 7 近代における古典鍼灸の復興 東郷俊宏 91
モクサアフリカのお灸100日間チャレンジの中間集計 マーリン・ヤング、 92
日本の伝統的な鍼灸治療とオステオパシー・マニピュレーションとの融合 サラ・E・リヴキン(任昕蕾) 95
コロナウイルスに関する情報
NAJOMのメンバーの皆様
3月25日付けで、Responses to NAJOM No.1を取り急ぎ英語のみ 発信しました。今回は、日本語の翻訳が終わったものからお送りします。翻訳の労をとられた、鈴木万記子、中村徹、井澤亮介、浅原由江 各氏に御礼を申しあげます。引き続き、翻訳が必要な記事がたまってきております。
これらに関して、日本語訳をして下さるボランティアを探しております。najom@shaw.caに、時間と力を貸してくださる方は連絡ください。大勢で少しずつ分けて翻訳すれば、時間がかからず、早急に配信可能です。よろしくお願いします。
水谷潤治
3月25日付けで、Responses to NAJOM No.1を取り急ぎ英語のみ 発信しました。今回は、日本語の翻訳が終わったものからお送りします。翻訳の労をとられた、鈴木万記子、中村徹、井澤亮介、浅原由江 各氏に御礼を申しあげます。引き続き、翻訳が必要な記事がたまってきております。
これらに関して、日本語訳をして下さるボランティアを探しております。najom@shaw.caに、時間と力を貸してくださる方は連絡ください。大勢で少しずつ分けて翻訳すれば、時間がかからず、早急に配信可能です。よろしくお願いします。
水谷潤治

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